広報こしがや

No.488 一過性脳虚血発作 工藤脳神経外科クリニック 工藤 吉郎

脳梗塞の前段階として脳梗塞の症状が出現し、すぐ消失することがあります。脳血流が一時途絶えまた再開し症状を発現するのです。これを、一過性脳虚血発作と言います。 脳の虚血(血液が届かなくなる)部位により種々の症状を呈しますが、片側の上下肢麻痺、顔面の麻痺、脱力、巧緻運動障害(細かい手作業がしづらくなる) 、視覚障害として片眼の視力喪失、視野の半分が見えなくなる半盲、片側の上下肢や顔面の感覚障害、失語症(言葉がでてこなくなる)等が出現します。症状は短いもので5分以内、60%は1時間以内、長くても一日以内に消失します。一過性脳虚血発作の患者のおおむね10~20%が3か月以内に脳梗塞を発症し、そのうちの約半数は2日以内に発症すると言われています。ですから、症状が軽快しても軽視してはいけません。危険性の高いものは入院が必要となります。 原因は1.頸部の血管の動脈硬化により小さな血栓が脳動脈または眼動脈へ飛来し一時的に閉塞する。2.動脈硬化により脳動脈が一時的に閉塞、狭窄し流れが悪くなり症状を発現する。 3.心臓の心房細動、弁膜症などの患者で小さな血栓が心臓より飛び脳血管を一時的に閉塞する等があげられます。検査はMRIがCTスキャンより鋭敏ですが、病巣は写ることも写らないこともあります。 治療は、まず詳細な病態解明のための検査を集中的に行い、あらゆる危険因子の評価を行います。動脈硬化性の原因であれば抗血小板療法、心臓が原因であるものには抗凝固療法が第一選択となります。頸動脈の狭窄している病変に対しては、頸動脈内膜剥離術または血管内手術の適応となることもあります。 脳卒中の予防には、危険因子の管理は不可欠であり、生活習慣に関連した修正可能な以下の危険因子、高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙、大量飲酒、肥満などを十分管理することが必要です。