№514 結膜弛緩症 越谷市立病院 尾羽澤 英子
目を正面から見ると真ん中に黒く丸い瞳(角膜)があります。その周りにある白目のところには結膜という半透明の膜があります。結膜はその下にある白目(強膜)を外界から守る役割をしています。目が左右上下に自由に動くためには、結膜にある程度の伸縮性と余分なたるみが必要です。
人の皮膚が年を取るとたるむように、結膜も年を取るとたるみが増えてだぶついてきます。程度が強いとだぶついた結膜(結膜弛緩)が黒い瞳にまで乗り上げて角膜がこすれて「ごろごろ」、「しょぼしょぼ」といった異物感を生じます。また、だぶついた結膜が下まぶたの辺縁と眼球の間の涙の通り道(ティアーメニスカス)を邪魔すると、目の表面に涙が上手に乗らなくなり目が乾くドライアイを起こすことがあります。逆にまぶたの内側にある涙の流出口(涙点)を塞ぐと涙が目の外に流れる症状が起きます。瞬きを強くするとだぶついた結膜どうしが強くこすれあい結膜の血管が切れて出血を起こし、白目が真っ赤になることもあります。これらが結膜弛緩症の症状です。
治療は手術で余分な結膜を切り取り結膜に張りを戻すことです。具体的には、結膜を縫い付けるだけの方法、結膜を切り取る方法、焼いて結膜を縮ませる方法などがあります。ほとんどの場合は術後1~2週間で症状は回復してきます。
60代以上のほぼ100%に結膜弛緩は見られます。年を取って結膜にだぶつきが出るのは自然なことなので必ずしも手術しなければならないということはありません。目薬を使って症状が治ればそれで十分です。しかし、目薬でも「ごろごろ」や「しょぼしょぼ」感が治らない、涙がいつも出る、白目に出血を繰り返すといった症状の方は、眼科を受診しご相談ください。
「ごろごろ」や「しょぼしょぼ」、涙目や結膜の出血は結膜弛緩症以外にもさまざまな原因がありますので、まずは眼科で診察を受けていただくことが大切です。