No.563 「周産期医療について」 佐藤産婦人科 佐藤智之
周産期医療について
周産期という言葉はご存じですか? 妊娠満22週~出生後7日目未満の期間です。この時期は母子ともに異常が発生しやすく、合併症妊娠や分娩時の新生児仮死など、母体・胎児や新生児の生命に関わる事態が発生する可能性が高くなります。
この時期における突発的な緊急事態に備えて、産科の医師と小児科の医師の双方から一貫した総合的な医療体制が必要なことから、特に「周産期医療」と表現しています。
妊娠出産は常に100%安全なものではありません。分娩時には、リスクの低い妊婦さんでも約3%に緊急の帝王切開が必要となり、リスクの高い妊婦さんは、帝王切開や新生児への処置が必要な確率は約20~30%ともいわれています。いろいろな条件や状態によって予想していなかった結果になることがあります。そのため、日頃の妊婦健診の機会などを通じて、あらかじめご自身の妊娠出産に伴うリスクを知っておくことや主治医と相談しながら妊婦さん自身の健康管理を含め、お母さんと赤ちゃんに適した分娩施設を選ぶことも大切です。
埼玉県内の周産期医療体制は必ずしも十分とはいえない状態ですが、妊産婦さんと赤ちゃんのために、安心して子どもを産み育てられるような周産期体制の整備を現在も進めています。
埼玉県内の周産期医療施設は、総合周産期母子医療センター(リスクの高い妊婦さんに対する医療や、高度な新生児医療を提供する周産期医療の中核施設)が2件、地域周産期母子医療センター(母体・胎児、新生児に対する比較的高度な医療を提供できる施設)が9件、新生児センター(新生児の受け入れに対応できる施設)が3件あります。越谷には地域周産期母子医療センターとして獨協医科大学埼玉医療センター、新生児センターとして市立病院があります。
また埼玉県での周産期体制のシステムには、母体・新生児搬送(母体救命)コーディネーターシステムがあり、一般産科施設に入院しているハイリスクな妊産婦さん・赤ちゃんを高次医療機関に転送搬送する必要が生じた場合に、搬送先を選定するお手伝いをしてもらえる事業です。このようなシステムで、市内で出産を控えているお母さん・赤ちゃんのために、我々医療従事者と行政がサポートできるよう努めていますので、ご安心ください。
最後に、異常事態発生率は決して高くはありません。大切なことは、妊婦さん自身が定期健診を受診し妊娠中の管理に主体的に取り組むことと、主治医と常に相談しながら妊娠出産に臨めるようにすることです。