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NO.607 子宮頸がんとHPV感染 産婦人科菅原病院 寺内文敏

 子宮の頸部にて発生する子宮頸がんは、毎年1万人以上がかかり、年間およそ2,900人の女性が亡くなる病気です。1日にすると8人、3時間に1人の女性の命が失われていることになります。発症は20歳台後半から増えていき、30歳台後半から40歳台にピークを認めます。そのため、子宮頸がんは「マザーキラー」とも呼ばれ、婦人科系の中でも、特に要注意のがんであります。
 「がん」という病気は、発症の原因がはっきりしているタイプと不明なタイプがあります。前者の代表的なタイプは、「胃がんとピロリ菌感染」や「肺がんと喫煙」などです。
 では、子宮頸がんはというと、「ヒトパピローマウイルス(HPV)感染」です。
 HPVは、性交経験のある女性であるならば50%以上が一度は感染するとされている実に一般的なウイルスです。HPV感染を来したら必ず子宮頸がんが発症するかといえば、そうではありません。ピロリ菌に感染したからといって必ずしも胃がんになるわけではないのと同様です。しかし、ピロリ菌感染者はその発症のリスクが約5倍に高まることが分かっています。同じことがHPV感染にも言えます。複数認められているHPVの型の中でハイリスクとされる16型や18型に感染し、その感染が数年から数10年にわたって、持続的に認められた結果として子宮頸がん発症のリスクは高まるとされています。具体的には、子宮頸部のHPV感染は約90%以上は知らない間に起こり、そして自然に消えていきます。しかし、約10%は細胞に持続感染を起こし、約4%は前がん状態(異形成)になり、最終的に0.1%~0.15%が子宮頸がんに変化していきます。
 この子宮頸がんを予防する有効な手段が、
「HPVワクチン」です。
 HPVワクチンは、特に子宮頸がんをお起しやすいハイリスクタイプである16型と18型の感染を防ぐことができます。そのことにより、子宮頸がんの原因の50%~70%を防ぎます。
 接種が進んでいる欧米やオーストラリアでは、子宮頸がん予防の有効性が報告されています。ただし、ワクチンはすべてのハイリスクHPVの感染を予防できるわけではないため、子宮頸がん検診も定期的に受診し、早期発見・早期治療を含めた子宮頸がん対策が大切です。