NO.611 インフルエンザワクチン接種について そうま呼吸器アレルギークリニック 相馬亮介
2020年1月に国内で新型コロナウイルスが確認されて以降、手指消毒やマスク着用、3密回避などの感染対策によりインフルエンザの流行は抑えられています。今季はどうでしょうか。
インフルエンザの流行予測は南半球での発生状況を参考にしますが、今年4月後半よりオーストラリアでの感染者数は増加傾向にあり日本でも同様に増加することが予想されています。さらに、過去2年間で流行がなかったことにより集団免疫が低下している可能性があること、従来よりもマスク着用が緩和され人的交流も増えてきていること、すでにインフルエンザの集団感染が報告されていることを考えると今季は流行の可能性が高いと予想されています。
また感染力の強いA(H3N2)香港型の流行が予想されており、流行し始めると急速に拡大することが危惧されているため、インフルエンザワクチンの接種が勧められています。特に65歳以上の高齢者、がんや糖尿病などの基礎疾患がある方、5歳未満の乳幼児、妊婦の方への接種は強く推奨されています。
インフルエンザワクチンについては「効果がない」「インフルエンザになったことがないから大丈夫」と考えている方もいるかと思います。確かにコロナワクチンと同様で完全に感染を防ぐことはできませんが、大切なのは重症化を予防することです。国内の研究では「65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者について約40%の発病を抑制し、およそ80%の死亡を阻止した」との報告もあり重症化予防の効果は十分あると考えられています。
現在は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、かぜ症状で医療機関を受診することは大変です。この冬、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザが同時流行することも考えられるため、今までインフルエンザになったことがない方も接種が可能な方は万が一に備えてワクチンを接種するようお勧めします。