広報こしがや

NO.613 新型コロナウイルス感染症と心血管病 埼玉東部循環器病院 原城 達夫

   2019年12月に中国武漢市の原因不明の肺炎の集団発生から始まり、世界的大流行となった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、日本でもウイルス変異を繰り返しながら流行し、2022年10月現在ようやく第7波が落ち着いてきました。しかしながら、この記事が載る今冬には、新たな変異による第8波がインフルエンザとともに大流行しているのかもしれません。COVID-19発生当初は肺炎を来す方が多く、一方、急死も認められ、その原因が心血管病にあるのではないかと推定されていました。ウイルス感染により血液凝固能が高まること、全身に炎症変化が及ぶこと、血管の内側を覆っている内皮細胞が広範囲に傷害を受けることなどが理由です。さらに、高齢者や基礎疾患がある人ほど重症になりやすいとも言われております。重症化のリスクとしては、高齢、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満(BMI30以上)、喫煙、免疫不全などですが、それらは心血管病のリスク因子、いわば、生活習慣病が多数を占めております。肥満や運動不足と重症化との関連の報告もあり、コロナ禍で運動不足になりがちな今、生活習慣の改善が感染予防対策の継続やワクチン接種を受けることとともに重要です。
 また、COVID-19感染は静脈血栓塞栓症などの血栓症が合併しやすいという報告もあります。急に片足の全体、あるいは、ふくらはぎが腫れたり、痛みを伴う下肢の深部静脈血栓症は、肺に血栓が飛んで肺塞栓を来すと胸が痛くなったり、呼吸が苦しくなったり、ひどくなると急死の原因になります。COVID-19にり患してしまった場合、自宅療養、宿泊療養などの際は、脱水に注意して下肢の運動もするようにしましょう。
 一方、最近の研究では、COVID-19り患後少なくとも1年間は、糖尿病の発症や心血管病、すなわち、心筋梗塞、心不全、脳卒中、静脈血栓塞栓症などを発症するリスクが上昇するという報告もあります。心血管病の予防のためには、喫煙や食生活などの生活習慣を見直すこと、運動をすること、検診などを定期的に受けていただくことが重要です。また、何か気になることがあれば、かかりつけ医へ相談いたしましょう。