広報こしがや

NO.620 健康診断で肝機能異常が 指摘されたら 北越谷クリニック 三宅 大

 今年も特定健診・特定保健指導の時期がやってきました。
 特定健診の大きな目標の一つに、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目して、いわゆる生活習慣病の診断と予防のための保健指導を受けていただくことを目的としています。高血圧やコレステロールなどの脂質代謝異常症、糖尿病と並んで、肝機能障害も検査対象となっています。
 肝機能障害の原因には肝炎ウイルス感染以外に、アルコールによるアルコール性肝やメタボリックシンドローム、糖尿病などによる脂肪性肝障害(以下脂肪肝)が近年増加傾向にあることが知られており、日本人の成人の20%~40%がり患する国民病の一つです。
 脂肪肝は、肝細胞の中に主に中性脂肪を主体とした余分な脂肪が蓄積した状態です。診断には主に超音波やCTなどの画像診断を用いられることが多いですが、比較的初期には診断困難なケースもあります。脂肪肝は、肝臓の中で起きた脂肪変性の結果生じた壊死・炎症により、その後肝繊維化を起こします。この繊維化が進むと肝硬変に進行していきます。そして、肝硬変は肝がんの発生母地となりうるものです。脂肪肝は肝硬変に進行するまでほとんど症状はありません。また通常の健康診断で行われる検査では進行度合いは分からないことが多く、注意が必要です。脂肪性肝障害の薬物治療は、残念なことに現時点で科学的な根拠の強い治療法はまだありません。肝硬変へと進行してしまう前に、食事や運動などにより体重の減量をすることが最も重要になります。高血圧や糖尿病、脂質代謝異常症などのほかの生活習慣病を持っていれば、その疾患の治療をすることによって改善することもあります。
 健康的な生活習慣を維持することで、予防ができることも多くあります。定期的な健康診断を受け、早期発見、早期治療を優先しましょう。