NO.622 災害時の医療体制 松田整形外科 松田 繁三
災害への備えは「自助」「共助」「公助」があります。医療面での自助とは、自宅に救急医薬品を備蓄しておくことです。しかしそれ以上に大事なことがあります。いつも服用している薬を多めに手元に置いておきましょう。共助とは、近隣のけが人や障がい者、高齢で動けない人々を支援していただくことです。しかし自助共助では全く足りないのが、大震災です。全国から医療班や自衛隊の応援を求めることになります。越谷市医師会でも、市との協議を重ねて災害発生時の医療活動を策定しています。まず急性期(発生から1週間)には、事前の取り決めに基づき、可及的速やかに医療班を各救護所に派遣します。医療班の構成は医師一人に看護師および事務方数名の予定です。可能な限りの医療班を編成して、各救護所を回る予定です。当然道路の陥没や橋の落下による交通網の寸断により、予定どおりにはいかないことが想定されます。自院での医療が可能なところはそのまま活動していただきます。医療班は、自院での活動が困難な先生方を中心に編成される予定です。急性期医療班の目的は、救える命を一人でも救うことです。
しかし大震災時は、傷病者のニーズが多くて医療が追いつきません。よって患者の重症度による選別(トリアージ)も必要です。トリアージとは、もともとは第一次世界大戦でフランス軍が始めた命の選別です。急を要する人、すぐに運べば命が助かりそうな人は優先するが、そうでない人(大きな骨折でも命に別状ない人等)は後回しにします。非情な采配ですがこれは大災害時の世界の常識です。ご理解ください。医師会では、そのためのトリアージ訓練を毎年医療従事者向けに実施しています。慢性期(発生1週間以後)には、各避難所に訪問診療を実施します。避難場所での窮屈な生活でエコノミー症候群等になっていないか?健康観察をすることが目的です。
繰り返します。医療班が来られないことも想定して、血圧や糖尿病の持病のある方は、薬を2週間分多めに確保しておきましょう。