広報こしがや

NO.629  溶連菌感染症 おはなちゃいるどクリニック 白石 昌久

 2023年は溶連菌感染症が日本国内で大流行した年でした。小児だけでなく成人の患者さんが多く発生しました。その結果、抗原検査キットや抗菌薬の流通にも影響が出るほどでした。感染者の増加に伴い、致死率の高い劇症型溶連菌感染症が増加したことがインターネットやニュースなどでも取り上げられ、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などとともに大きな話題となった年でした。
 溶連菌感染症とは一般的にA型溶血性連鎖球菌による感染症のことを言います。主に咽頭に感染し、発熱、咽頭痛、頭痛、発疹、イチゴ舌などの症状を呈します。接触感染による感染が主体で、しばしば家族間や幼児施設、学校などで流行が見られます。
 診断は咽頭の発赤やイチゴ舌、発疹などの特徴的な所見に加え、咽頭のぬぐい液による抗原検査で診断します。
 治療は抗菌薬が有効で、特にペニシリン系の薬剤(アモキシシリンなど)が推奨されています。心臓(リウマチ熱)や腎臓(糸球体腎炎)などの合併症を予防する観点から、7~10日間の内服を行う必要があり、症状が消失しても自主的に休薬せずに飲み切ることが重要です。
 抗菌薬による加療が行われるようになってから合併症の頻度は大幅に低下しましたが、発展途上国など発症頻度の高い地域は今もなお存在します。これらの合併症の多くは溶連菌感染に対して産生された抗体が人体の組織に影響して発症すると言われています。多くは溶連菌感染症の発症後2~3週間ごろに認められます。特に糸球体腎炎は初期には目に見える症状に乏しいため、感染後1カ月たったころに尿検査を実施することが一般的です。
 溶連菌の感染を防ぐためには手洗いやマスクによる予防が有効です。また、抗菌薬内服後24時間以上経過し、発熱、発疹などの症状が改善していれば、内服中でも登園、登校が可能です。