No.319 痔瘻(じろう)について 市川 純二
痔の病気にはいろいろありますが、肛門の周囲より膿(うみ)が出る場合、痔瘻、肛門周囲膿瘍(のうよう)に代表される痔瘻の系統の病気が考えられます。
痔瘻といえば、昔は結核性のものと思われていたことがありますが、最近は結核性のものはほとんどなく、主として大腸菌が原因です。
痔瘻というのは直腸肛門管と連絡のある管のことです。普通は大便中の細菌が肛門管の一部から侵入して肛門のまわりに炎症をおこします。その結果膿がたまって、それが破れると肛門管と連絡する治りにくい管が残ります。これが痔瘻です。
痔瘻には簡単なものと複雑なものといろいろありますが、次の4つに分類されます。
Ⅰ型…皮下痔瘻
Ⅱ-L型…低位筋間痔瘻
Ⅱ-H型…高位筋間痔瘻
Ⅲ型…坐骨(ざこつ)直腸窩(か)痔瘻
Ⅳ型…骨盤直腸痔瘻
痔瘻の治療で、一番確実で安全な方法は入院して手術することです。痔瘻でも単純なものと複雑なものといろいろあり、それによって手術法も違います。手術 の原則は感染源である肛門陰窩(原発口)と肛門腺(原発巣)の切開開放と瘻管壁の壊死(えし)、瘢痕(はんこん)組織の除去および適切なドレナージです。
次に肛門周囲膿瘍について説明しますと、直腸と肛門の境に歯状線というものがあります。この漏斗(ろうと)状にへこんだ部分(クリプト)に汚物が侵入し 炎症がおき、肛門腺管から肛門腺へと進み化膿して膿がたまります。こうなると肛門の痛みが強くなり、熱も出ます。痔疾患で発熱するのは、この肛門周囲膿瘍 だけです。自然排膿したり、切開して膿が出ると痛みは楽になり熱も下がります。運のよい場合は、自然にクリプトがふさがってそのまま治る場合もあります が、ほとんどは排膿があり、完全に直すには根治手術を行うほかありません。
最後に、痔瘻は薬では治りません。早いうちに専門医に診てもらい、適切な手術を受けることが大切です。