広報こしがや

No.342 神経内科とは 田久保 秀樹

神経内科と聞いてどんなことをしているかご存じですか。ほとんどの人は知らないと思います。私自身も医師になって初めて具体的なことを知ったのですか ら。精神科・神経科と間違えてストレスや心配ごとで困ったり、気持ちがめいる人やいわゆる自律神経失調症の人が行くところという誤解も多いのです。 しかし、本来の神経内科は大脳・脳幹・脊髄(せきずい)などの中枢神経、末梢(まっしょう)神経、筋肉の異常による病気を診療するところです。具体的に は手足の麻痺(まひ)や言語障害をおこす脳卒中、手足がふるえたり、歩行や動作が遅くなるパーキンソン病、痴呆(ちほう)をおこすアルツハイマー病、体の バランスが悪くなる脊髄小脳変性症、全身の力が弱くなる重症筋無力症や筋萎縮性側索硬化症・筋ジストロフィー症、さらに偏頭痛、てんかん、髄膜脳炎、ギラ ンバレー症候群、多発性硬化症、多発性神経炎など他にも多くの病気があります。 神経内科でよく見る症状には意識が悪くなる・頭痛・めまい・感覚障害(しびれ)、力が弱い・物忘れ・しゃべりにくい・手足や顔の筋肉のふるえ・まぶたが 下がる・細かい動作が下手になる・歩行障害(足を引きずる、小刻みに歩くなど)・けいれんなどがあります。そのなかできちんと検査治療するべき病気と自覚 症状はあっても心配のいらない症状を見極めていくことが大切です。そのために神経学的な診察を行い、神経系に異常がないかを調べます。この診察には時間が かかるので神経内科は待たされるという患者さんにとって悪い面もあります。症状に応じてCT・MRI・脳波・筋電図・血液検査などを行い、診断治療を考え ていきます。 とは言うものの医学が細分化されている現在では、実際に自分の症状がどこの診療科へ行くのが適切か判断することは難しい問題です。神経内科はまれな病気 が多く、なじみが少ないのも事実で、自らの意志で神経内科を受診する人は少数です。できればふだんからかかりつけの先生を持ち、困った症状があれば相談し て適切な医療機関を紹介していただくことがよいと思います。実際、神経内科は医療関係者からの紹介が多いのです。 最後に神経内科を深く知りたい方には岩波新書の『神経内科』(1995年発行)を推薦します。