No.343 不妊治療 長沢 敢
結婚後2年以上たっても妊娠しない場合を一般的に不妊症と呼んでいます。
不妊の原因はいろいろありますが主なものは①排卵障害、②卵管通過障害、③着床障害、④子宮内膜症、⑤性感染症、⑥男性不妊等が考えられます。
排卵障害に対してはクロミッド療法やゴナドトロピン療法などで治療しますが後者は多発排卵による多胎妊娠や卵巣がしゅ大し、腹水などを伴うOHSS(卵胞過剰刺激症候群)の発生などに注意が必要です。
卵管通過障害は卵管形成手術も行れれますが成功率は低く、最近では体外受精が多く行われています。体外受精とは排卵時に卵巣から卵を採取しそれに精子をふりかけて受精卵をつくり培養後子宮内にもどすという方法です。
着床障害に関しては現時点では不明な点も多く治療法も確立されていないというのが現状です。
子宮内膜症は子宮内膜(類似物質)が別の場所に存在するもので月経痛を伴うことが多く、不妊との関係も深いと考えられています。おなかの小さな傷から腹膣内を検索、処置する腹腔鏡検査で子宮内膜症は正確に診断できます。
性感染症のなかではクラミジア・トラコマティスが注目されており、子宮頚管部に発症したのち子宮膣内や卵管あるいは腹腔内に障害をもたらし不妊の原因となります。
男性不妊においては最近では顕微受精も開発されて効果がみられています。
当院においてはまず精液検査、クラミジア・トラコマティス検査、子宮卵管造影による子宮内膣や卵管の通過状況などチェックし、場合によっては腹膣鏡検査 で腹膣内を精査し、子宮内膜症や腹膣内癒着がみつかった場合は同時にできる範囲で処置を行います。その後経膣超音波による卵胞計測やホルモン測定にて正確 な排卵時を推定し夫婦交渉のタイミングを指示し数カ月間しても妊娠にいたらなければ夫の精子を直接子宮内に注ぐいわゆる人工受精(AIH)を行います。そ れでも妊娠しない場合には体外受精や顕微受精などの生殖補助技術を行っている専門機関を紹介しています。