広報こしがや

No.344 せきとたん 岡野 昌彦

今回は呼吸器疾患の基本的症状である「せき」と「たん」はどうして、どのように起こるかを知っていただき、呼吸器の病気の理解に役立てていただき、最後に禁煙外来についてふれたいと思います。 まず、「せき」の起きるメカニズムですが、ある刺激を気管支内で感じると神経を介し反射的に声帯を閉じ、呼吸筋(横隔膜、肋間筋)が収縮し、非常に高い 気道内圧を作ります。その後、その強い圧力で一気に肺内の空気を吐き出すことで、気管についた刺激物(たん、異物)を細かくして外に出します。その力が強 すぎて、呼吸筋や肋骨を痛め、「せき」の後に胸の痛みを訴えることが多いのです。「せき」を起こす刺激は、外からだけでなく、体の中で起こる場合もありま す。 一方、「たん」には2つの産生装置があり、主に太い気管支に多くある気管支粘膜下腺から粘液と水分が一日100~200㍉リットル産生されています。肺末しょうにある杯細胞からの分泌は、肺炎や肺胞上皮癌などの病気のときに増します。 このような「せき」と「たん」が主体となる病気には、「たん」を伴う湿性のもの(慢性気管支炎など)とほとんど「たん」を伴わない乾性のもの(間質性肺 炎など)があります。急性の場合はほとんどがかぜによる感染症ですが、最近は原因のはっきりしない2~3週続く遷延性のせきや8週以上続く慢性のせきを訴 える患者さんが多くなっています。ひとつはちくのうや鼻炎による後鼻漏によるせき、ぜんそくにちかい「せきぜんそく」の人、胃液が食道に逆流して起こるせ き、高血圧の薬(ACE阻害薬)による「せき」などがその原因と考えられます。また、「せき」の出やすい人として閉経後の女性が過敏であることがわかって きました。さらに、日本の女性の喫煙率が高いことも間接的に影響しているかもしれません。 禁煙外来ではまず、たばこが自分と他人の健康をいかに害しているか知っていただき、禁煙の意思を確認してから、具体的に禁煙方法を実施していく。さら に、途中で離脱しないために1~2週に一度外来でカウンセラーしていきます。禁煙するための方法もいろいろありますから、禁煙を考えている方は一度主治医 にご相談したらいかがでしょう。