広報こしがや

NO.634   心の病気と向き合うということ 北辰病院 中村保喜

 皆さんは心の病気や精神科に対してどんなイメージがありますか。率直に「怖い」「意味不明」「自分とは関係ない」など、いろいろあるかもしれません。残念ながら医療従事者でも苦手意識のある方もいます。なぜでしょうか。
 人は分からない物事に対して本能的に不安や恐怖を抱く生き物です。お化け、学校、試験、仕事、結婚、出産、育児、災害、老後、病気、死、人間関係などなど。新型コロナウイルス感染症も流行初期は世界中の人々が未知のウイルスに恐れおののきました。
 一方で、人は分からないものを理解しようとすることで乗り越える力をもっています。原始人が火を恐れる存在から果敢に挑戦し、暮らしを豊かにする存在に変えたように。また、人は皆幸せになりたいと思って生きています。周囲から理解されにくい言動や行動でもその多くは本人にとって幸せになるため、あるいは不幸せを減らすための理由が隠れています。
その理由や因果関係を考察するのが科学であり精神医学です。当院に実習に来る前は精神科に不安が強かった看護学生や研修医たちが終了時には「患者さんへの見方が変わりました」と笑顔で話してくれることもあります。
 心の病気は体の病気と同様、決して他人事ではありません。少なく見積もっても5人に1人は一生の間に何かしらの心の病気にかかるとされています。私や皆さんも含め誰もがかかる可能性があるのです。人は常に変化やストレスにさらされています。大抵の場合は慣れ、持ち直すことができますが、大きいストレスが長期間かかると耐えられなくなってしまいます。誰もが望んでその病気や状態になったわけではないにも関わらず、生きづらさに苦しんでいます。決して恥ずべきことではないし、治療法や対処法があるかもしれないのに。逆に早期発見、早期治療開始することで重症化を防ぐこともできます。
 私たちは日々今困っている方々のためにトライ&エラー、時には取っ組み合いをしながらその方の人生を教えていただきながらともに成長したいと考えています。そして皆が誇りと尊厳を持って暮らせる社会にしたいと思います。まずは一人で抱え込まずに相談してみませんか。