広報こしがや

NO.612 睡眠時無呼吸症候群と不整脈 おだやかライフ内科クリニック 西澤寛人


 睡眠呼吸障害(SDB)のうち、特に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は不整脈や高血圧などの循環器疾患の原因として知られています。OSASとは夜間睡眠中に何らかの原因で上気道閉塞が生じ、1時間当たりの10秒以上の呼吸停止または低呼吸の数(無呼吸低呼吸指数AHI)が5回以上起こる疾患です。
 特に終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)でAHIが20以上の方は、日常生活に支障を来すだけでなく、さまざまな合併症が起こるため持続的陽圧呼吸療法(CPAP)治療が必要となります。
 OSASの合併症の中で不整脈の合併率は約50%と高頻度であることが知られています。OSASと合併する不整脈の種類では洞機能不全症候群、房室ブロックなどのペースメーカーが必要となる徐脈性不整脈や、心室性期外収縮、脳塞栓症などの原因となる心房細動、さらには致死性不整脈である非持続性心室頻拍などが認められています。海外での臨床研究によると重症のOSAS(AHI≧30)が基礎疾患にある場合、心房細動の合併率は4.8%と健常者の約5倍であり、さらに無治療の重症OSASは心房細動に対する抗不整脈薬やカテーテルアブレーション治療の有効性を減少させることがわかっています。
 OSASによる心房細動などの不整脈の発症には、無呼吸による胸腔内圧の陰圧化に伴う左心房の伸展、血圧上昇に伴う心房への過度な負荷や低酸素血症などによる交感神経活性の亢進、血圧変動、カテコラミンなどのホルモン分泌の亢進が関与していると考えられています。
 現在、PSG検査は入院することなく自宅で行うことが可能で、以前と比べると簡便になっており、保険適応の検査となっています。特定検診などで徐脈性不整脈や心室性期外収縮、心房細動などの不整脈を指摘され、いびきや運転中などの日中の突然の睡魔、起床時の頭痛などのOSAS症状がある方は、一度PSG検査を行いOSASのチェックをすることをお勧めいたします。