NO.624 膝のお話 レイクタウン整形外科病院 安村健介
膝関節は荷重関節とも呼ばれ、股関節・足関節とともに痛みがあれば行動が制限され日常生活に支障を来します。その痛みの原因は、関節リウマチや痛風に伴う結晶沈着性関節炎等の炎症性疾患、半月板損傷や靭帯断裂、骨折等の外傷、そして慢性疾患である変形性膝関節症に大別されます。変形性膝関節症の原因は、単純に加齢や肥満によるものと理解されている方が多いようです。しかし実際には片まひや他部位の痛みによる健側への過負荷、骨折後変形治癒による歩容異常、前十字靭帯損傷後の膝関節不安定性、骨粗しょう症を起因とする膝関節内ぜい弱性骨折等の関与も少なくありません。若年者であってもけい骨関節面が地面に対し、内方傾斜の強い方に発症率が高いとする報告もあります。
保存的治療法として、1)症状を悪化させない日常生活指導、2)薬物治療、3)理学療法と4)装具療法が知られています。特に1)と3)が鍵で、O脚予防の立ち方・歩き方と膝関節周囲筋力強化運動は大切です。適切な保存的治療法を行っても、3カ月以上関節内に水がたまり続ける場合にはMRIによる精査を推奨します。
外科的治療法として、関節温存手術である膝関節周辺骨切り術と、虫歯に金冠をかぶせるような人工関節置換術が知られています。膝関節周辺骨切り術では関節内の体重が掛かる場所を変える、または不安定性を取ることを目的とし、変形の種類や必要とする矯正角度によって大たい骨と下たい骨の骨切り術を単独で、あるいは組み合わせて行います。人工関節置換術は、すべての関節面を取り替えるものが一般的です。しかし内側あるいは外側だけを取り替えるもの、またしつ蓋?大たい関節のみ取り替えるものを単独で、場合により組み合わせて行うこともあります。
健康寿命と平均寿命の差を縮めるためには、痛みなく歩ける毎日が必要です。長く続く膝の痛みを加齢や肥満によるものとして諦めるのではなく、専門医へ相談される事をお勧めいたします。